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パーキンソン病(Parkinson病)の診療について

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参考ガイドライン
・文献等

概要

パーキンソン病(Parkinson Disease, PD)は黒質のドパミン神経細胞が障害されることで発症し、運動緩慢、振戦、筋強剛を中心とした運動症状が前景となる神経変性疾患である。

診療スライド

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詳細については、下記のドキュメントを参考にしてください。

一般外来・病棟で一般内科医が遭遇するシチュエーションとしては、
①まだ専門医によるPDの診断がついていない状態
②専門医によるPDの診断がついているが何かの理由でコントロール不良な状態
③PDを背景に感染症等を罹患しPDの薬剤調整に難渋する場合
等が想定されます。
脳神経内科専門医へのアクセスが容易であれば閾値を低くコンサルトをすべきと思われるが、非専門医においても基本的なスクリーニング等は外来診療において有用になると思われる。
①においてはまずParkinsonismの評価を行い、薬剤性Parkinsonismを含む”Treatable”な病態を見抜くことが重要である。
加えてPDらしさがあれば、脳神経内科専門医に紹介し確定診断と難病申請を行う必要がある。②③においては、PDの疾患的特徴と薬物動態を知ることで、ある程度の調整はできるが、可能な限り脳神経内科専門医にコンサルトを行うことが望ましい。

疫学

  • PDの罹患率は14-19人/10万人・年とされ、有病率は概ね100-300人/10万人と推定される。
  • 年齢とともに患者数は増加するため、65歳以上に限定すると、有病率は950人/10万人となる。
  • PDのほとんどは孤発型であるが、5-10%は遺伝性であり家族歴の病歴聴取は行うべきである。

鑑別

  • 薬剤性Parkinsonism: 内科外来を受診しPDやParkinsonismを疑う患者様でまず除外する必要がある疾患である。抗精神病薬や抗てんかん薬はもとより、カルシウム拮抗薬、制吐薬(ドンペリドン)、抗真菌薬、抗潰瘍薬など幅広い薬剤が原因になりうる(表1を参考)。
  • 本態性振戦(Essential Tremor, ET): 手の震えを主訴に受診したときに鑑別となる。静止時振戦、pill-rolling tremorなどが主体であればPDを疑うが、姿勢時振戦が主体であればETを疑う。ただし、中には鑑別困難な症例があったり、ETからPDに移行・合併する症例もあるので注意が必要である。
  • 進行性核上性麻痺 (Progressive Supranuclea Palsy, PSP): PSPの中でもsub-categoryがあり、典型的なものはPSP-RS(Richardson-type)と言われる。体幹の筋固縮、眼球運動障害、画像所見(Hamingbird sign)が特徴的。中にはPSP-P(Parkinsonism)タイプもありPDとの鑑別が難しい。
  • 大脳基底核変性症(CBS): 大脳皮質症状(感覚障害、失行、失語、視空間認知障害等)とParkinsonismを併せ持つ事が特徴。
  • 多系統萎縮症 (MSA): 小脳性の運動失調、Parkinsonism、自律神経障害のいずれかの症状で発症し、慢性に進行する。いわゆるMSA-Pの状態であればParkinsonismが主体であるが、症状進行に伴い小脳性運動失調、自律神経障害がoverlapしてくる。
  • 脳血管性Parkinsonism: 高齢発症で左右対称性のParkinsonismが生じます。脳梗塞の既往、運動麻痺や錐体路徴候、認知症等を合併している場合が多い。
  • 正常圧水頭症(iNPH): 歩行障害、認知機能障害、尿失禁が古典的3徴です。Parkinson病のような小刻み歩行だけでなく、wide-basedな開脚歩行を認める。脳室拡大を示唆する特徴的な画像所見(Evan’s index, DESH)等を認める。シャント術により症状が改善する可能性があるため、疑った場合はtapテストを行う。
  • レビー小体型認知症(DLB): 病理学的にはPDとほぼ同じである。臨床的には認知機能低下、幻視、Parkinsonismを認める。Parkinsonismが出現してから1年以内に認知機能が低下したものをDLBと診断し、それ以降に認知機能低下したものはPDD(Parkinson disease with dimentia)と診断します。PDとDLBをあえて鑑別する理由は、DLBには薬剤過敏性があったり、コリンエステラーゼ阻害薬が有効である事など、PDと治療法が異なるためである。

パーキンソニズムを引き起こす薬物一覧
(1)より引用

問診・症状・身体所見

PDの運動症状と非運動症状に注目して問診や身体所見をとる。特に運動症状の評価はUPDRS Part III (Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)が参考になるが、ここではある程度抜粋し簡潔に記載する。

①非運動症状

嗅覚障害、自律神経障害(起立性低血圧、排尿障害、便秘、発汗障害)、精神症状(気分障害、幻覚、レム睡眠行動異常症(RBD))、睡眠障害(過眠、突発睡眠、不眠)、認知機能障害、体重減少などの病歴聴取を時系列に丁寧に行う。
RBDとは、夢を見ている行動が抑制されずそのまま現実の行動となって現れてしまう事である。悪夢である必要はない。

②運動症状

PDの主要な運動症状は寡動(bradykinesia)である。寡動とは全ての行動が小さく、ゆっくりになる。小字症、声量低下、仮面様顔貌、瞬目減少、tapping finger testや回内回外試験での減衰などがこれにあたる。
静止時振戦も重要な所見であり、典型的には安静時にpill-rolling tremorを認める。振戦を認めない場合でも、精神的負荷(例えば100から7を引く計算をさせる)などで出現することがある。また、手を前に挙上させると最初は振戦を認めないが、遅れて振戦が出現することをre-emergent tremorといい特徴的所見となる。
筋強剛も必ず評価すべき身体所見である。上肢であれば肘関節、手関節を、下肢であれば膝関節を、体幹では頸部や腰部を評価する。左右差を意識して診察をしたい。筋強剛はlead-pipe(鉛管様)なのか、cog-wheel(歯車様)なのかを評価する。
姿勢異常姿勢反射障害も重要な所見である。立位の姿勢は前傾姿勢になる。また、症例によっては左もしくは右に傾く、Pisa徴候を認めることがある。姿勢反射障害は患者を立位にさせ、前方向や後ろ方向に押し、易転倒性を評価する。重症の場合は、棒のようにまっすぐとそのまま倒れてしまう。
歩容も必ず評価する。典型的にはすり足歩行があり、歩行開始困難(freezing-gait)を認め、一旦歩行が始まるとなかなか止まらず突進現象を認める。歩行開始困難があっても、音や視覚のキュー(メトロノームや横断歩道のような線)があると歩行がスムーズになることも特徴である(矛盾性歩行)。歩行時には腕振りにも注目したい。PDであれば筋強剛が強い側の腕振りが減少し、同時に振戦を認めることがある。(ちなみに歩行がおぼつかないPD患者でも自転車はスムーズに乗ることができる。これはペダルを漕ぐ動作がキューとなり、スムーズに乗れるのではないかと考えられている。)

上記の通り丁寧に非運動症状の聴取と運動症状の診察を行うことで診断できることが多いが、病初期の場合は全ての症候が揃っているわけではないので、慎重に観察する必要がある。症状は一般的に一側の手もしくは足から始まり、N字型に進行すると言われる(例えば右手→右足→左手→左足のように進行する)。症状に左右差があることもPDの特徴であり、逆に両側にParkinsonismを認めている場合は、薬剤性や脳血管性を疑う根拠になる。

検査・診断

PDはバイオマーカーや絶対的な検査所見がないため、先述した問診と身体所見から十分に検査前確率を高くしてから必要な検査を行う必要がある。
DaT-SPECTやMIBG心筋シンチグラフィーなどの核医学検査は費用も高額でありスクリーニングツールとしては用いてならない。
頭部MRI検査: PDを直接支持する異常所見はないが、PDの鑑別疾患を除外するために有用である。つまり特徴的な画像所見がないことがPDの特徴でもある。その他のParkinsonismをきたす疾患では特徴的な画像所見が認められることが多い。例えばMSAでは被殻の萎縮、橋の十字サイン(hot cross bun sign)、T2で被殻外側に線条体の高信号を認める。PSPでは中脳被蓋部萎縮に伴いhummingbird signを認める。CBDでは前頭葉や頭頂葉の萎縮に左右差を伴うことが多い。
DaT-SPECT検査: PDと黒質線条体系の変性を伴わない疾患(薬剤性Parkinsonism、本態性振戦、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、健常人)との鑑別に有用。加齢とともに、集積は低下していくため、評価に注意が必要。(参考画像所見
MIBG心筋シンチグラフィー: PDとその他のParkinson症候群を鑑別する際の感度・特異度ともに80%以上あり鑑別診断上有用である。自律神経障害、三環系抗うつ薬、ラベタロールなどの薬剤の併用によりMIBG集積が低下するため注意が必要。
 International Parkinson and Movement Disorder Society (MDS) 診断基準(2015)臨床的に確実なパーキンソン病(clinically established Parkinson's disease)パーキンソニズムが存在しさらに、1)絶対的除外基準に抵触しない.2) 少なくとも2つの支持的基準に合致する..3)相対的除外基準に抵触しない。 臨床的にほぼ確実なバーキンソン病(clinically probable Parkinson's disease)パーキンソニズムが存在しさらに、1) 絶対的除外基準に抵触しない。 2)相対的除外基準と同数以上の支持的基準がみられる。 ただし2つを超える相対的除外基準がみられてはならない。 支持的基準(supportive criteria) )1. 明白で劇的なドパミン補充療法に対する反応性がみられる。 この場合,初期治療の段階では正常かそれに近いレベルまでの改善がみられる必要がある。 もし初期治療に対する反応性が評価できない場合は以下のいずれかで判断する。 ・用量の増減により顕著な症状の変動(UPDRS part IⅡでのスコアが30%を超える)がみられる、または患者または介護者より治療により顕著な改善がみられたことが確認できる,・明らかに顕著なオン/オフ現象がみられる。 2. L-ドパ誘発性のジスキネジアがみられる.3. 四肢の静止時振戦が診察上確認できる。 4.他のパーキンソニズムを示す疾患との鑑別診断上,80%を超える特異度を示す検査法が陽性である。 現在この基準を満たす検査として以下の2つが挙げられる。 ・嗅覚喪失または年齢・性を考慮したうえで明らかな嗅覚低下の存在・MIBG 心筋シンチグラフィによる心筋交感神経系の脱神経所見絶対的除外基準(absolute exclusion criteria)1.小脳症状がみられる。 2. 下方への核上性眼球運動障害がみられる。 3,発症5年以内に前頭側頭型認知症や原発性進行性失語症の診断基準を満たす症状がみられる。 4. 下肢に限局したバーキンソニズムが3年を超えてみられる。 5. 薬剤性パーキンソニズムとして矛盾のないドパミン遮断薬の使用歴がある。 6. 中等度以上の重症度にもかかわらず、高用量(> 600 mg)のレードバによる症状の改善がみられない。 7. 明らかな皮質性感覚障害,肢節観念運動失行や進行性失語がみられる。 8. シナプス前性のドパミン系が機能画像検査により正常と評価される。 9. パーキンソニズムをきたす可能性のある他疾患の可能性が高いと考えられる。 相対的除外基準(red flags)1.5年以内に車椅子利用となるような急速な歩行障害の進展がみられる。 2.5年以上の経過で運動症状の増悪がみられない。 3.発症5年以内に重度の構音障害や嚥下障害などの球症状がみられる。 4.日中または夜間の吸気性喘鳴や頻繁に生じる深い吸気など吸気性の呼吸障害がみられる。 5.発症から5年以内に以下のような重度の自律神経障害がみられる。 ・起立性低血圧:立位3分以内に少なくとも収縮期で 30 mmHg または拡張期で 15 mmHgの血圧低下がみられる。 ・発症から5年以内に重度の尿失禁や尿閉がみられる。 6. 年間1回を超える頻度で繰り返す発症3年以内の転倒、7.発症から10年以内に、顕著な首下がり (anterocollis)や手足の関節拘縮がみられる。 8.5年の罹病期間のなかで以下のようなよくみられる非運動症状を認めない。 ・睡眠障害:睡眠の維持障害による不眠,日中の過剰な傾眠, レム睡眠行動障害の症状・自律神経障害:便秘,日中の頻尿,症状を伴う起立性低血圧嗅覚障害・精神症状:うつ状態,不安,幻覚9. 他では説明のできない錐体路症状がみられる。 10,経過中一貫して左右対称性のパーキンソニズムがみられる。 (Postuma RB, Berg D, Stern M, et al. MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson's disease. Mov Disord. 2015: 30(12): 1591-1601.)注1: inspiratory sighs. 多系統萎縮症で時にみられる呼吸障害の1つで、しばしば突然不規則に生じる深いため息様の吸気障害がみられる。5.発症から5年以内に以下のような重度の自律神経障害がみられる。 ・起立性低血圧:立位3分以内に少なくとも収縮期で 30 mmHg または拡張期で 15 mmHgの血圧低下がみられる。 ・発症から5年以内に重度の尿失禁や尿閉がみられる。 6. 年間1回を超える頻度で繰り返す発症3年以内の転倒。 7.発症から10年以内に、顕著な首下がり(anterocollis)や手足の関節拘縮がみられる。 8.5年の罹病期間のなかで以下のようなよくみられる非運動症状を認めない。 ・睡眠障害:睡眠の維持障害による不眠、日中の過剰な傾眠、レム睡眠行動障害の症状・自律神経障害:便秘日中の頻尿、症状を伴う起立性低血圧・嗅覚障害・精神症状:うつ状態,不安,幻覚9. 他では説明のできない錐体路症状がみられる。 10. 経過中一貫して左右対称性のパーキンソニズムがみられる。

治療

治療の基本はL-dopa/DCI(ドパ脱炭酸酵素阻害薬)合剤になる。
ドパミン補充療法により症状が改善することも診断基準にあるため、PDを疑う患者にはドパミンによる治療反応性を試しても良い。その際は、L-dopa/DCI 50mg 1日2-3回程度と少量から開始する。内服開始初期は嘔気を訴えることが多いため、しっかりと説明し、必要があれば制吐剤も合わせて処方する。

他にも治療薬としてはドパミンアゴニスト、MAOB阻害薬、COMT阻害薬、アマンタジン、抗コリン薬、ドロキシドパ、ゾニサミド等があるが、非専門医による薬剤調整はあまり推奨されない。最近はレボドパカルビドパ経腸用液療法(LCIG)や手術による脳深部刺激療法(DBS)等もあるが、適用を含めて専門医へのコンサルトが必要である。

PD患者の周術期や入院管理を行う際の最大の注意点に悪性症候群が挙げられる。L-dopa内服を急に中止すると悪性症候群を発症する可能性がある。何かしらの理由で内服できない場合は、ドパストン®等のの点滴製剤でL-dopaの補充を行う。
また、エフピー®(MAOB阻害薬)を内服している患者の場合、オピオイドの併用によりセロトニン症候群が出現することがあるため、予定手術の場合は休薬が必要である。

専門医紹介のタイミング

問診と身体所見を行い、薬剤性ParkinsonismをはじめTreatableな原因を除外した上で、PDを疑う場合は早期に専門医に紹介すべきである。よほど特殊な事情でなければ非専門医が薬剤調整とフォローを行うことは望ましくない。DaT-SPECTやMIBG心筋シンチグラフィー等の核医学検査も高額であり、タイミングも重要であることからこれも専門医で行うことが望ましい。
また、Hoehn-Yahr 3度以上の場合は難病医療費助成制度が利用できる。この難病申請書類は脳神経内科専門医でしか申請できないため、社会的側面においても脳神経内科に紹介すべきである。

脳神経内科にすでに確定診断されたPD患者を紹介する場合のコツとして、①何年前発症か、②どのような症状で発症したか(ex. 右手の静止時振戦)、③Hoehn-Yahr何度か、を最低限記載してくれるとわかりやすいです。(脳神経内科 原瀬 翔平)

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