肝胆道系酵素の健診異常
肝胆道系酵素の健診異常の検査について
検査
血液検査
肝逸脱酵素であるAST・ALTと、胆道系酵素であるALP・γ-GTPの上昇の程度を比較し、肝炎型か胆汁うっ滞型かを鑑別する。
※肝逸脱酵素は基準値の10倍以上に上昇することもあるが、胆道系酵素は酵素誘導により上昇するため基準値上限の3倍以上は明らかな上昇、5倍以上は高度上昇と判断する。
肝逸脱酵素(AST・ALT)
- AST<ALT
- 慢性肝炎、肥満による脂肪肝
- AST>ALT
- 肝硬変、肝癌、アルコール性肝障害
※急性肝炎の発症早期はASTが優位になるが、ピーク近傍になるとALT優位に逆転する。
胆道系酵素(ALP・γ-GTP)
- ALP
- 薬剤性肝障害、原発性胆汁性胆管炎(旧称:原発性胆汁性肝硬変)、閉塞性黄疸などで上昇。
※ALPにはアイソザイムが存在する(肝、骨、小腸、胎盤など)ため、胆道系以外の疾患を鑑別するのに役立つ。
- γ-GTP
- ALPに比べて肝胆道系特異性が高い。飲酒で上昇しやすい。
- 合成・代謝機能障害の評価(Alb・ChE・PT・T.chol)
Albは半減期が14~20日と長いため、リアルタイムで肝の蛋白合成能を評価することはできない。これに対しPTは半減期の短い第Ⅶ因子(4~6時間)を含むため、リアルタイムに蛋白合成能を評価できる。
- 解毒・排泄機能の評価(Bil、アンモニア)
肝胆道系疾患では直接ビリルビンが優位になる。
※AST、ALT、ALP、γ-GTPが基準値内で総ビリルビンのみ上昇する場合は溶血か体質性黄疸を疑う。
- 肝線維化マーカー(血小板、ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン、PⅢP、M2BPGi)
- 肝線維化が進むと脾機能亢進に伴い血小板数が低下する。血小板数10万μL以下になると肝硬変の合併が示唆される。
- 腫瘍マーカー
- 肝細胞癌(AFP、AFP-L3分画、PIVKA-Ⅱ)、胆管細胞癌、膵癌(CEA、CA19-9)
肝障害の原因検索
血液検査
慢性肝炎と関連のある採血項目
- HBs抗原、HCV抗体
- 抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体、抗平滑筋抗体(自己免疫性肝疾患)
- HbA1c、血糖値(肝性糖尿病)
- TSH、FT3、FT4(甲状腺疾患)
- 銅、セルロプラスミン(Wilson病)
- 鉄、フェリチン(ヘモクロマトーシス)
急性肝炎と関連のある採血項目
- IgM-HA抗体、HBs抗原、HCV抗体、HCV RNA、IgA-HE抗体、HEV RNA
- EBウイルス(VCA IgG、VCA IgM、EBNA、EA IgG)、サイトメガロウイルス抗体
腹部超音波検査・CT検査
肝腫大や萎縮、肝辺縁鈍化、肝表面不整、脂肪肝、脾腫大、胆道閉塞、腹水貯留、腫瘍性病変の有無を評価。