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医師向け診療サポート

気管支喘息(成人)の診療について

概要

吸入ステロイド(ICS)を代表とする抗炎症薬がキードラッグ。慢性炎症性疾患という点ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と共通する点がある。クリアカットには説明できなくなっていて一部の治療が重複する。

疫学

有病率は5%強。小児期と壮年〜老年期の二峰性に多い。
喘息死は圧倒的に高齢者。「予備能力がないこと・診断の遅れ・キードラッグである抗炎症薬の投与ができていないこと」などが理由と考えられる。

鑑別

いわゆる「喘鳴が聴こえる(ぜーぜーする)」疾患と「咳が出る」疾患。

喘鳴が聴こえる

心不全
COPD
など。

咳が出る

急性(~3週間)の場合:
感冒、マイコプラズマ、百日咳、クラミジアなど
慢性(3週間~)の場合:
咳喘息、アトピー咳嗽、感染後咳嗽、副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症など
*詳細は慢性咳嗽の鑑別ページ(作成中)

問診

  • 発症様式(onset)と悪化の契機
    • 「時間帯・温度・気圧」は?
    • 「日内変動・季節」は?
    • 姿勢(就寝時など)や運動での誘発
  • 自宅や職場の環境の確認
    • そうじをしているか
    • かび臭くはないか
    • じゅうたんがないか
  • 最近の出来事の確認
    • ストレスがないか
      • 不眠や疲労
      • 職場でのトラブル
      • 身内やペットの不幸
    • 粉塵は発生していないか
      • 自宅や近所での工事
      • 黄砂や花粉
      • 大掃除・模様替え・引っ越し
      • ホコリっぽい空間での空気清浄機やエアコンの使用(撹拌)
  • 併存疾患と既往歴の確認
    • 小児喘息の有無(あれば寛解期の有無も)
    • 周辺疾患の有無(心不全など)
  • アレルギーの確認
    • 食物
    • 薬物
    • 花粉症
    • アトピー性皮膚炎(AD)
    • 金属アレルギー
    • IgE測定歴
  • 家族歴
  • NSAIDs不耐症(旧称アスピリン喘息)除外
    • 鎮痛解熱薬
    • 食品(カレー、ミント)
    • 鼻閉

身体所見

呼気終末の喘鳴(wheezes)

  • 喘鳴が聴こえにくい・服を脱ぐことができない場合などは頸部でも聴取可
  • 通常の呼気でなく、深呼吸から一気に呼出してもらう(強制呼出)ことで聴取可能な場合がある
  • 体重増加や下腿浮腫がある場合は心不全を考慮する

検査

  • 胸部X線や胸部CT(器質的疾患の除外)
  • 呼吸機能検査(ないし吸入改善試験)
    • β2刺激薬の吸入を行い、1秒量がベースラインより12%以上かつ200mL以上の改善した場合に陽性
  • ピークフローメータ(PEF)(変動ないし推移を見る)
  • 血液検査(好酸球・IgE)
  • 呼気NO(FeNO)(食事や喫煙での修飾に注意)
  • 喀痰検査(培養だけでなく細胞診で好酸球を見る)
  • ほか除外のための検査(心エコーなど)

治療


維持の治療(controller)

  • ICS(inhaled corticosteroid:吸入ステロイド薬)
    • 抗炎症作用、経口よりは安全、カンジダ予防のためうがい必須
  • LABA(long-acting beta-agonists:長時間作用性β刺激薬)
    • 気管支拡張作用
  • LAMA(long-acting muscarinic antagonist:長時間作用性抗コリン薬)
    • 気管支拡張作用
    • 前立腺肥大に伴う排尿困難や閉塞隅角緑内障で禁忌となる
  • LTRA(leukotriene receptor antagonist:抗ロイコトリエン受容体拮抗薬)
    • 抗アレルギー作用
  • キサンチン製剤
    • 気管支拡張作用、動悸やふるえに注意(高齢者で濃度上昇しやすい)

発作の治療(reliever)

  • OCS(oral corticosteroid:経口ステロイド薬)
    • 主に発作時、典型的な副作用に注意、短期間で終えることが多い
  • SABA(short-acting beta-agonists:短時間作用性β刺激薬)
    • 発作時、連用で効かなくなる、缶とネブライザー
  • エピネフリン皮下注射(ボスミン)
    • 緊急時、0.1%製剤を0.1〜0.3 mL、頻脈に注意

先進的医療(重症喘息が対象、いずれも高額→公費負担や限度額申請)

  • Mabs(分子標的薬)
    • 自己注射普及、多彩な標的
  • BT(bronchial thermoplasty:気管支サーモプラスティ)
    • 非薬物療法、適応に注意、合併症あり

前述のようにCOPDとoverlapをする(ACO)という概念があるので、臨床的には治療が共通する部分がある。
吸入薬は様々。デバイスの種類や、配合薬の組み合わせなど。年齢や吸入力で使い分ける。
*呼吸器領域のLABAと循環器領域のβ遮断薬の併用が避けられることがある。一般的にLABAはβ2選択性が高いので、問題はないものとされている。
BUD/FM(シムビコート・ブデホル)にはSMART療法がある。症状に合わせて吸入回数を調節できるメリットがある。他の製品は、原則として調節を想定していない。
キサンチン製剤(例:アミノフィリン静注)
以下の理由があり初診時や緊急受診時には使わないものと考えて差し支えない。
1. 高齢者などで血中濃度や感受性が問題になること。
2. 事前に飲んでいる場合には(定期・頓用いずれにせよ)追加投与で濃度が急激に上がってしまう。特に意識障害や認知症で単独受診の場合には情報がないので注意。
肥満の改善
やせるだけで改善する層がいる。
中年女性に多い。気道狭窄の改善だけでなく、サイトカインネットワークの影響が指摘されている。
例えば脂質代謝におけるアディポネクチンや、運動におけるマイオカインのようなもの。

フォローアップ

安定期の患者ではステップダウンが考慮される。具体的に配合製剤からICS単剤を目指す、など。

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K E呼吸器内科
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2021/8/3

治療について

増悪時

  • 増悪時に、ステロイドを処方することがありますが、点滴である必要はなく、内服追加で十分です。(「コハク酸エステルってどの製剤?」と悩むなら、内服を選ぶのが無難。)
  • 増悪原因について精査の上で、SABA吸入(2回程)、ステロイド点滴(理論上は効果発現までに数時間を要するので、正直効果判定にはあまり期待していません。)で、酸素化がベースラインまで戻らない、wheezeや呼吸苦強く自宅生活困難であるという場合は入院加療を選択します。
  • 帰宅する場合は、ステロイドの内服追加(20mg*5日分など、さらに短期間の場合30mg程度など。)して、外来フォロー(通院間隔は可能は患者と相談)

治療の強化など

  • 治療の強化としては吸入ステロイドの用量を増やす、吸入回数を増やす、アレルギー素因ありそうならばLTRAを優先するなどすることがあります
  • LAMAは直近のガイドラインではLABAと同列の扱いですが、製品によっては喘息に適応がないこともあります。実際には第一選択になることは多くないようです。

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