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感染性心内膜炎(IE)の診療について

最終更新日時
参考ガイドライン
・文献等

概要

血液培養でしっかり菌を同定することが重要。また外科的介入もしっかり考慮する。

リスク

  • 免疫抑制状態(悪性腫瘍 / 糖尿病など)
  • 血液透析
  • ペースメーカーなど人工物留置
  • 歯科治療歴
  • アトピー性皮膚炎

症状

  • 発熱(90%)
  • 寒気や震え(50%)
  • 体重減少(30%)
  • 易疲労感(45%)
  • 心不全症状

身体所見

  • 心雑音
  • 肝脾腫(20%)
  • Janeway皮疹(手足の無痛性紅斑 5~10% 参考
  • Osler班(有痛性皮疹 3~10% 参考
  • 点状出血斑(30%)
  • 皮下出血斑(10%)
  • 網膜出血斑Roth斑(2~10% 参考

検査

  • 血液培養
    • 少なくとも3セット(インターバルは30分以上あけるなど目安はあるが定まっていない)
    • Stapylococcus aureusなどのように重症敗血症を引き起こす場合は抗菌薬投与を遅らせるべきでなく、ひとまず2セット以上を一時間以内に採取
  • 亜急性の経過をたどる場合は原因菌特定のために抗生剤を休薬することもある(48時間~7日程度。定めはない。)
    • 呼吸循環動態が不安定な場合や感染創が進展している・塞栓リスクが高い場合は中止しない。
    • 人工弁IEでも休薬すべきでない。
  • 心臓超音波検査
    • 特に経食道心臓超音波検査(参考

*Bartonella(猫ひっかき病の原因菌)抗体検査は病歴から疑われ、培養陰性の場合は考慮
*真菌によるIEも考えられる場合はβーDグルカンなど

診断

修正Duke診断基準を参照する。

表4 IEの診断基準(修正 Duke 診断基準)【確診】病理学的基準(1) 培養,または抗腫,塞栓を起こした抗腫,心内膿瘍の組織検査により病原微生物が検出されること,または(2) 抗腫や心内膿瘍において組織学的に活動性心内膜炎が証明されること臨床的基準)(1) 大基準 2つ,または(2) 大基準 1つおよび小基準3つ,または(3) 小基準5つ【可能性】(1) 大基準1つおよび小基準1つ,または(2) 小基準3つ【否定的](1) IE 症状を説明する別の確実な診断,または(2) IE 症状が4日以内の抗菌薬投与により消退,または(3) 4日以内の抗菌薬投与後の手術時または剖検時にIE の病理学的所見を認めない,または(4) 上記「可能性」基準にあてはまらない

診断基準の定義を説明します[大基準]● IEを裏づける血液培養陽性2回の血液培養で IE に典型的な以下の病原微生物のいずれかが認められた場合・Streptococcus viridans, Streptococcus bovis(Streptococcus gallolyticus), HACEKグループ,Staphylococcus aureus,または他に感染巣がない状況での市中感染型 Enterococcus- 血液培養が IE に矛盾しない病原微生物で持続的に陽性12 時間以上間隔をあけて採取した血液検体の培養が2回以上陽性,または・3回の血液培養のすべて,または4回以上施行した血液培養の大半が陽性(最初と最後の採血間隔が1時間以上あいていること)1回の血液培養でもCoxiella burneti が検出された場合,または抗「相菌 IgG抗体価 800 倍以上心内膜障害所見」• IEの心エコー図所見(人工弁置換術後,IE 可能性例,弁輪部膿瘍合併例では TEE が推奨される.その他の例ではまずTTE を行う.)・弁あるいはその支持組織の上,または逆流ジェット通路,または人工物の上にみられる解剖学的に説明のできない振動性の心臓内腫瘤,または膿瘍,または・人工弁の新たな部分的裂開新規の弁逆流(既存の雑音の悪化または変化のみでは十分でない)●[小基準]素因:素因となる心疾患または静注薬物常用● 発熱:38.0℃以上● 血管現象:主要血管塞栓,敗血症性梗塞,感染性動脈瘤,頭蓋内出血,眼球結膜出血, Janeway 発疹免疫学的現象:糸球体腎炎, Osler 結節,Roth 斑, リウマチ因子微生物学的所見:血液培養陽性であるが上記の大基準を満たさない場合,または IE として矛盾のない活動性炎症の血清学的証拠「コアグラーゼ陰性ブドウ球菌や IE の原因菌とならない病原微生物が1回のみ検出された場合は除くIE:感染性心内膜炎 TEE:経食道心エコー図 TTE:経胸壁工コー図(LiJS, et al. 2000より)
参照(1)より引用

治療

内科的加療

  • 抗生剤治療
    • 培養菌の感受性に準じる
    • 治療開始後、判定のために2~3日後に血液培養採取し陰性化を確認する(起因菌の陰性化確認するまでは継続)
    • エンピリック治療については下記参照
  • 感染巣のコントロール
    • 歯科治療
    • 膿瘍などある場合はドレナージ
    • 中心静脈カテーテルある場合は抜去検討

  IEのエンピリック治療または血液培養陰性時の抗菌薬の推奨"とエビデンスレベル推奨 エビデンス抗菌薬投与量クラス レベル備考スルバクタム・アンピシリン1回3.0g1日3~4回IlbCMRSA の可能性が低い場合亜急性の臨床経過の場合+セフトリアキソン+1回2.0g、1日1回ダプトマイシン1回8~10 mg/kg, 1日1回IlbCペニシリンアレルギーの場合+セフトリアキソン+1回2.0g 1日1回自己弁ダプトマイシン+1回8~10 mg/kg, 1日1回+1回3.09.1日3~4回llbCMRSAを考慮スルバクタム・アンビシリン,または、バニペネム・ベタミプロン1回0.5g, 1日3~4回1回19,1日2回、または1回 15 mg/kg, 1日2回バンコマイシンIlbCペニシリンアレルギーの場合腸球菌も考慮腎機能低下例,高齢者では注意+ゲンタマイシン+1回2~3 mg/kg、1日1回ダプトマイシン1回8~10 mg/kg, 1日1回IlbCセフトリアキソンはスルバクタム・アンピシリンでも可+セフトリアキソン+1回2.0g. 1日1回ダプトマイシン1回8~10 mg/kg, 1日1回人工弁IlbCMRSAを考慮+バニペネム・ベタミプロン+1回0.5g. 1日3~4回バンコマイシン1回19,1日2回、または1回 15 mg/kg1日2回IlbCゲンタマイシンは1回1 mg/kg.1日2~3回でもよい腎機能低下例,高齢者では注意+ゲンタマイシン+1回2~3 mg/kg1日1回原因菌が判明したら標的治療を行う IE:感染性心内膜炎
参照(1)より引用

  • 合併症治療(心不全など(参考))

手術加療

  • NYHA Ⅲ~Ⅳの心不全をきたすような場合や、10mmを超える疣腫、ほか合併症ある場合や抵抗性感染の場合に強く推奨されている。 

IE に対する早期手術についての推奨とエビデンスレベル状況適応,推奨など*'緊急度推奨クラスエビデンスレベル急性高度弁機能不全または壊孔形成による難治性肺水腫・心原性ショック緊急IB心不全高度弁機能不全,急速に進行する人工弁周囲逆流による心不全準緊急1B準緊急IB弁輪部膿瘍,仮性動脈瘤形成,壊孔形成,増大する抗腫や房室伝導障害の出現適切な抗菌薬開始後も持続する感染(投与開始2~3日後の血液培養が陽性.3~5日間以上下熱傾向を認めない)があり、ほかに感染巣がない準緊急llaB難治性感染症真菌や高度耐性菌による感染準緊急/待機的I( C抗菌薬抵抗性のブドウ球菌, 非 HACEKグラム陰性菌による人工弁IE準緊急/待機的llaC人工弁 IE の再燃準緊急/待機的llaC適切な抗菌薬開始後も1回以上の塞栓症が生じ、残存(> 10 mm)または増大する抗腫準緊急1B10 mm を超える可動性の抗腫および高度弁機能不全がある自己弁 IE 3準緊急llaB塞栓症予防30 mm を超える非常に大きい孤発性の洗睡準緊急llaB10mm を超える可動性の抗腫*4準緊急IlbC脳梗塞合併時にも,適応があれば IE 手術を延期すべきではない注)昏睡やヘルニア,脳出血合併例,大きな中枢性病変を除く。 llaBB脳血管障害合併時の手術時期に、新規の頭蓋内出血を認めた場合.4週間は開心術を待機することを提案する注) 微小出血を除く。
参照(1)より引用

専門医紹介のタイミング

  • IE疑って経食道エコーする際
  • 急性心不全になっている場合

さらに

歯科治療など口腔内処置や耳鼻科処置・前立腺切除・膿瘍ドレナージなどの際に予防的抗菌薬投与を考える群

  • classⅠ:弁置換術後患者 / IE既往 / チアノーゼ心疾患 / 体循環ー肺循環の短絡作成をしたもの
  • classⅡa:先天性心疾患(ASD2次孔型は除く) / 弁膜症 / 閉塞性肥大型心筋症 / 逆流を伴う僧帽弁逸脱
    • アモキシシリン2g (βラクタムアレルギーない場合)/ クリンダマイシン600mg / アジスロマイシン500mg / クラリスロマイシン400mg いずれかを歯科処置一時間前に内服

冠動脈塞栓などを起こした場合の治療はいまだに確立していない(症例
脳梗塞で回収された血栓から診断されるケースも(症例

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白石 達也循環器内科
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2021/4/29

治療について

  • 抗生剤は6~8週間など長期に投与するので、なるべく最初に起因菌をしっかり特定したいところです。
  • ペースメーカー感染が原因になる場合は、抜去の上、感染が落ち着くまで一時的ペースメーカーで経過をみることもあります。
  • 急速に重度の大動脈弁閉鎖不全▶NPPVも要するような急性心不全になるような方もいらっしゃいます。

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