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医師向け診療サポート

脳梗塞の診療について

概要

動脈硬化や血栓により脳動脈が閉塞(および血流が低下)することにより、その還流域の細胞が障害を受けることで、麻痺や感覚障害・失語などの症状を生じる疾患。代表的な病型として、アテローム血栓性、心原性、ラクナ梗塞がある。

疫学

脳卒中として年間約29万人が発症し、そのうち脳梗塞は約65%程度とされる。

リスク

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 心房細動
    • CHADS2スコアでリスクの確認。
  • 喫煙(受動喫煙も含む)
  • 大量飲酒(エタノール換算450g/週以上)
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • メタボリックシンドローム
  • 慢性腎不全
  • 炎症マーカー
    • 高感度CRPをリスク選別に利用してもよい。
  • ヘマトクリット高値
  • フィブリノゲン高値

鑑別

脳出血、くも膜下出血、慢性硬膜外血種などの頭蓋内出血性病変、脳静脈洞血栓症、脊髄病変(梗塞・血種・腫瘍など)、脳腫瘍、脳炎・髄膜炎、てんかん、代謝異常(低血糖、肝性脳症など)など

問診

  • 発症時間(t-PAや血管内治療の適応があるかの判断に必要)
  • 発症時の症状・状況
  • 前駆症状の有無(TIA症状があったかどうか)
  • 症状の経時的変化(改善/悪化傾向にあるか、不変かなど)
  • リスクとなる既往歴・家族歴があるかどうか

症状

  • 意識障害
  • 脳の巣症状(片側の麻痺・感覚障害、失語、視野障害、注視麻痺、半側空間無視など)
  • 構音障害
  • 失調
  • 眼症状(眼動脈障害による視力障害)

身体所見

  • バイタルサインチェック
  • 心雑音・不整脈の有無、血圧の左右差チェック、頚部血管雑音、脱水症状(皮膚・舌の乾燥、ツルゴール低下など)
  • 神経症状の確認
  • 脳圧亢進症状はあるか?(頭痛、嘔吐、うっ血乳頭が三徴)
  • 髄膜刺激症状はあるか?(頭痛、項部硬直、ケルニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候など)

検査

NIHSS(NIH Stroke Scale)

  • 神経症状の重症度評価スケール。
  • 42点満点で点数が高いほど重症。
  • t-PAの適応があるかの判断基準にもなる。(計算サイト

頭部CT

  • 発症直後は変化に乏しい(※early CT sign)が、時間経過とともに低吸収域となる。
  • 脳梗塞の領域が一部出血することもある。(出血性梗塞)
  • 脳出血・くも膜下出血・慢性硬膜下血腫などの頭蓋内出血性病変がないかどうか確認。

頭部MRI

脳梗塞部位は急性期においてDWIで高信号となる。(脳腫瘍など鑑別。)

頭頚部MRA

  • MRIと同時に撮影できれば行う。
  • 血管狭窄や動脈解離がないか確認。

脳血流検査(SPECTなど)

脳梗塞発症超早期に、ペナンブラ(脳血流が落ちているが神経細胞はまだ生きている状態の領域)を検出することで、血管内治療の適応判断などに有用な検査となる。

血液検査

血糖値については画像検査の前にデキスターチェックができれば良い。

脳梗塞の発症リスクとなる疾患の評価として

  • Ht、Plt、糖尿病、脂質異常症、肝機能・腎機能など

凝固・線溶系

  • 病型鑑別やDICの診断、基礎疾患の詮索の手掛かりになる。
  • PT-INR、aPTTはt-PA投与の適応があるかの判断に必要。

心電図・胸部Xp

  • 心房細動の検出など。
  • 心筋梗塞や大動脈解離に伴う脳梗塞がありうるということに留意。

心臓超音波検査

  • 心原性脳塞栓症が疑われる場合や、そうでなくともルーチンで行うことが望ましい。
  • また通常の検査で塞栓源不明の脳梗塞では、経食道心超音波検査(心内血栓や大動脈の状態把握、左右短絡疾患の確認)も有用。

頸動脈超音波検査

  • ルーチンで行うことが望ましい。

治療

急性期治療

血栓溶解療法(rt-PA、アルテプラーゼ)

発症4.5時間以内の脳梗塞に検討される。
※ASPCTS(中大脳動脈領域を10領域に分け、脳梗塞の範囲を定量化するスケール)によるスコアリングも参考になる。

血管内治療

発症8時間以内、前方循環の主幹脳動脈(内頚動脈、中大脳動脈M1部)の脳梗塞に検討される。

抗血小板療法

  • アスピリン160-300mg/日の経口投与(発症48時間以内に開始)
  • 抗血小板剤2剤併用(非心原性脳梗塞、発症~21日間で検討される。)
  • オザグレルナトリウム(点滴静注の薬。非心原性脳梗塞、発症5日以内に開始。内服ができない患者などに検討。)

抗凝固療法

  • アルガトロバン(選択的トロンビン阻害薬。発症48時間以内で病変最大径が1.5cmを超す脳梗塞、非心原性脳梗塞に使用。)
  • ヘパリン(発症48時間以内の心原性脳塞栓症に考慮してもよい。)
  • 心原性脳梗塞に対する内服抗凝固薬は出血の副作用を考慮し、発症から4日~2週間のあいだで開始を検討する。

脳保護療法

エダラボン点滴。

脳浮腫管理

高張グリセロール、20%マンニトールの使用を考慮してもよい。

消化管出血予防

高齢者や重症患者ではH2ブロッカーを考慮してもよい。(PPIは保険適応なし)

リハビリテーション

発症早期からのリハビリテーションが推奨される。

ヘマトクリット高値

循環血症減少によるものであれば脱水の是正。多血症が存在すれば治療介入。

フォローアップ

抗凝固薬

  • 一般的に心原性脳塞栓症(心房細動)に用いる
  • ワーファリンはINR2.0-3.0で調整、70歳以上やTIA患者では1.6-2.6で調整。
  • 適応があればDOACでも可。

抗血小板剤

  • 非心原性脳梗塞の再発予防には、抗凝固薬より抗血小板剤が推奨される。
  • 使用可能の薬剤:シロスタゾール200mg/日、クロピドグレル75mg/日、アスピリン75-150mg/日
  • 抗血小板剤2剤併用期間について、1年以上は推奨されていない。具体的な投与期間は明確な決まりはなく、各々の患者でリスク/ベネフィットを検討する必要がある。

内頸動脈狭窄症

MRAや頸動脈超音波検査で評価。手術適応があれば脳外科へコンサルト。なければ抗血小板剤、脂質異常症改善薬を用いた内科的治療。

リスク管理

高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、メタボリックシンドロームなどに対する治療。

高血圧

  • 数値目標→リスクにより140/90mmHgもしくは130/80mmHg
  • 薬剤の選択→Ca拮抗薬、利尿剤、ARB、ACE-Iの中から選ぶのが望ましい
  • 糖尿病、慢性腎臓病、心不全などではARB、ACE-I、血圧変動の観点からはCa拮抗薬が推奨される。

糖尿病

  • 血糖管理を含め、血圧・脂質異常症・肥満・喫煙など一般的なリスクを包括的にコントロールすることが重要。
  • 具体的な数値目標はそれぞれの患者背景に応じて検討される。明確な基準は現時点でなし。ただ厳格な血糖コントロール(HbA1c6.0%以下)は脳卒中予防に寄与せず、逆に死亡率を上昇させるというデータあり(低血糖が悪影響を与える可能性)。

脂質異常症

  • スタチンの効果が不十分な場合はエゼチミブやPCSK9阻害薬の併用が勧められる。
  • 低HDLコレステロール血症も危険因子となる。

慢性腎不全

  • 血圧管理および生活習慣の改善(禁煙、減塩、肥満の改善、節酒)を行う。
  • 2型糖尿病を有する場合はCKDの進行抑制のため厳格な血糖コントロールが推奨される。
  • 降圧薬は糖尿病あるいは蛋白尿を有する場合、ACE-IやARBが勧められる。

専門医紹介のタイミング

  • 発症短時間以内(t-PA施行や血管内治療の適応時間内)
  • 内頚動脈狭窄症の手術適応がある
  • 広範囲の脳梗塞などで開頭減圧術の必要性が予想される
  • 脳梗塞の原因が不明(動脈硬化所見に乏しい、心房細動がみつからない場合など)

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M M内科一般
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2021/8/3

・DAPTは脳梗塞を繰り返しているような方などに導入を考慮します。
・脳梗塞自体は画像検査(MRI)でほぼ診断がついちゃうので、脳梗塞っぽい症状だけど画像所見が合わない(DWIで高信号がない)、や、動脈硬化以外の脳梗塞の原因詮索(例えば若年発症の脳梗塞だったり)、というところで悩むことが多いかなと思います。
・フィブリノゲン高値については実際治療介入していない(できない)ことが多いと思います。

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