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神経因性膀胱の診療について

概要

神経系の疾患や損傷を原因として起こる弛緩性または痙性の膀胱機能障害。

疫学

40歳以上の12.4%が過活動膀胱である(1)。
低活動膀胱については報告によりバラつきがあるが、10-45%程度(2)。

リスク

膀胱や膀胱出口部の神経伝達を障害するような病態はいずれも神経因性膀胱の原因となることがある。
・脳卒中
・神経変性疾患
・糖尿病
・脊髄疾患
・骨盤内手術
・下部尿路閉塞
など

鑑別

・原因となる病態の精査が重要
・過活動膀胱なのか、低活動膀胱なのかによって原因と対処が異なることに留意

問診

・原因となる病態の有無について聞く(どのような手術を受けたか、糖尿病の罹患歴がどれくらいか、もともとの排尿状況がどうであったか、など)
・頻尿なら、飲水行動を問診する(可能なら排尿日誌をつけてもらう)

症状

・過活動膀胱を疑う場合、「尿意切迫感」があるかどうかが大切。切迫性尿失禁の有無も確認する。
・低活動膀胱で残尿が多くても自覚症状が無い場合が多々あるので注意。「尿は出ている」という訴えの裏に、膀胱が緊満しているために尿が漏れ出している溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)が隠れていることがある。

身体所見

併存する神経症状に注意する。たとえば糖尿病なら、末梢神経障害を疑う症状があるかどうかを確認する。骨盤内手術や脊髄疾患の場合、直腸障害の有無も確認する。

検査

・尿検査で感染症の有無をチェックする
・採血で腎機能と、糖尿病の有無など原因となる疾患について評価する
・残尿測定検査(ブラダースキャンで正確に測定できないケースもあり、必要に応じてエコー検査で測定する。縦×横×高さ×0.5で容量を概算できる)
・エコー検査で膀胱や腎臓の状態を評価する
必要に応じて、膀胱鏡検査、尿流動態検査、膀胱造影検査などを行う

治療

・薬物治療、またはカテーテルによる管理を行う。
・膀胱出口部の閉塞があるなら、α1ブロッカーを使用し、膀胱過活動があるなら抗コリン薬やβ3作動薬を使用する。
・膀胱の高圧状態を避けることが大切であり、無理に圧をかけて排尿させず、カテーテル管理に切り替える。
・カテーテル管理には、尿道カテーテルを常時留置するか、間欠的に導尿するか、夜間のみ尿道カテーテルを入れるなどの方法がある。
・尿道カテーテル留置による合併症が起こるなら、膀胱瘻を造設する。
・必要に応じて飲水量を調節する。
・特に失禁で困っている場合は、骨盤底筋体操の指導(参考)を考慮する。
・治療に難渋する場合は、手術(小児での膀胱拡大など)を検討する。

フォローアップ

・神経因性膀胱の原因となっている病態が一過性のものなら、改善するまで投薬とカテーテル管理を継続する。
・神経因性膀胱による症状が長期間に及ぶものであれば、間欠的自己導尿の手技を確立してもらう、特に男性の場合は尿道カテーテルを膀胱瘻にするなど、患者のQOLを加味した最適な管理法にする。

専門医紹介のタイミング

下記のような場合は専門医への紹介を要する。
・残尿検査やエコー検査などの基本的な評価が困難な場合。
・投薬によって改善が乏しい場合。

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伍木 脩泌尿器科
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2021/7/22

検査について

  • 溢流性尿失禁を見逃すことがもっとも避けるべき状態であるため、「尿が出過ぎて困っている」という場合にも必ず残尿検査を行う必要があります。

治療について

  • 神経因性膀胱は、膀胱の高圧状態を避けることが大切で、無理に自排尿にこだわらずにカテーテル管理に切り替えることが大切です。

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