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医師向け診療サポート

うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害の診療について

概要

少なくとも2週間続く抑うつエピソードと、食欲や体重の変化、睡眠や活動性の変化、活力の減退、罪責感、思考や決断力の生涯、そして死についての反復思考や自殺念慮のうち4項目を伴う。うつ状態がそのままうつ病を意味するわけではない。 身体疾患(脳血管疾患、神経疾患、悪性腫瘍など)に高頻度に合併し、患者さんの多くは、精神科や心療内科以外を受診する(内科、婦人科、脳外科、等)

疫学

  • 生涯有病率は 5.7%(日本)
  • 受診率3割(過去 12 ヶ月間にお いてうつ病を経験した者のうち(川上憲人, 2016))と低い。
  • 1/4は慢性化・再発すると言われる

リスク

自死のリスクとして以下

  • 男性
  • 65歳以上
  • 単身者
  • 自殺企図や精神科入院歴の既往
  • 自死の家族歴
  • アルコールなどの物質依存
  • パニック障害・不安、重症身体疾患が併存する
  • ”著しい絶望感の存在”

自殺の計画性(自殺計画の有無+計画の具体性)は、切迫度評価の重要なポイントとなる。
自殺念慮の具体的計画性、出現時期・持続性、強度、客観的観察、他害の可能性を評価し、いずれか一つでも存在する場合はリスクが高い

鑑別

  • 背景に身体疾患が潜むことも(甲状腺機能低下症、糖尿病、心不全、多発性硬化症や認知症などの神経疾患、膠原病)
  • 物質使用障害(依存症)、パニック症、強迫症、社交不安症など併存しやすい。男性は物質使用障害を、女性は不安症や摂食障害を併発しやすい。
  • 月経前不快気分障害

*死別反応は強い苦悩をひき起こすが、通常うつ病のエピソードを起こすことはない(6か月以上の持続あれば注意)

問診 ・診断

うつ病の診断基準です。抑うつ気分あるいは興味または喜びの喪失のいずれか一つに加えて、体重や食欲の減退または増加、不眠または過眠、精神運動焦燥または制止、疲労感または気力の減退、無価値感あるいは過剰な罪悪感、思考力や集中力の減退あるいは決断の困難、死についての反復思考についての項目のいずれかがあわせて5つ以上あり、社会生活に障害をきたしている状態

スクリーニングの質問

1.「この 1 ヶ月間,気分が沈んだり,憂うつな気持ちになったりすることがよくありまし たか.」
2.「この 1 ヶ月間,どうも物事に対して興味がわかない,あるいは心から楽しめない感じ がよくありましたか.」

把握すべき情報

1) 言い間違い・迂遠さ
2) 身長・体重・バイタルサイン
3) 一般神経学的所見(パーキンソン症状、不随意運動など)
4) 既往歴:糖尿病、閉塞隅角緑内障
5) 家族歴:精神疾患・自殺者の有無
6) 現病歴:初発時期、再発時期、「きっかけ」「悪化要因」生活上の不都合
7) 生活歴:発達歴・学歴・職歴・結婚歴・飲酒歴・薬物使用歴
8) 病前のパーソナリティー傾向
9) 病前の適応状態
10) 睡眠の状態:夜間日中を含めた睡眠時間、いびき・日中の眠気の有無
11)意識障害・認知機能障害・知能の低下の有無
12)女性患者の場合:妊娠の有無、月経周期に伴う気分変動、出産や閉経に伴う気分変動

治療

過去に抗うつ薬で効果あり、罹病期間が長い、不眠や食思不振が強い、焦燥がある、などでは抗うつ薬を使用。

SSRI/SNRI/ミルタザピン(第一選択)

※ 双極性障害の場合は、抗うつ薬の処方は避ける(躁転や気分の動揺性をひき起こすため)双極性障害の可能性あれば精神科へ紹介を。
※ SSRIは副作用として消化器症状があり、メトクロプラミドやドンペリドンを使用することも

ベンゾジアゼピン

初期に併用することで、治療からの脱落率を低下させる。
ただし抗不安薬1剤、睡眠薬1剤まで。
依存もあり安易な長期使用は避ける。
衝動性を高めることがあることを念頭におく(衝動性のある患者には控える)
※ ゾルピデム・ゾピクロン・エスゾピクロン(Z-drug)であっても、減量や中止が難しくなる場合もある。初期用量で効果が得られなければ、安易に増量や併用はせずに精神科へ紹介を。

精神療法(認知行動療法など)

実施可能かは医療機関による。傾聴や共感という支持的アプローチを心がける。
※死別反応に関連する抑うつは、脆弱性のある人に生じる傾向があり、治療により回復が促進される可能性がある。

断酒

アルコールが抑うつ状態をひき起こすことがある
アルコールに対して動機づけ面接、アルコール・リハビリテーションプログラム(ARP) →専門医や断酒会につなぐ
*自殺のリスクが高い、幻覚や妄想などの精神病症状を伴う、昏迷等がある中等症~重症の場合:新規抗うつ薬に加えてTCA/non-TCAの投与、場合によってはECTの適応も  →専門医に紹介

フォローアップ

再燃、再発を繰り返しやすいことを念頭に、環境調整等の心理社会的介入も。不適切な休養に注意し、「行動活性化」を意識する。

  • 病状が安定するまでは1-2週間ごとにフォローし、薬物療法の効果、社会生活や日々の過ごし方のチェック、を行う。
  • 抗うつ薬による躁転の兆しがあれば、原因薬剤を中止の上、夜間休日も対応できる精神科病院に紹介するのが望ましい。

専門医紹介のタイミング

中等症・重症/精神病性うつ病は速やかに精神科へ。切迫した状況であれば精神科救急医療システム(都道府県名を加えて検索するとヒットする)の利用を検討。
その他
・典型的なうつ病の病状ではない場合
・単極性うつ病以外の気分障害、とくに双極性、非定型など
・不安・焦燥が強い
・アルコール、等の物質使用(処方薬や市販薬の乱用にも注意)
・抗うつ薬による治療に反応しない、うつ状態が遷延している
・年金の申請など、社会保障制度の利用を検討する場合
・児童思春期のうつ病(心理教育、学校や親への介入等環境調整を要することが多いため)
月経前不快気分障害の可能性があれば婦人科へ

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2021/7/22

治療について

  • 通常の睡眠薬で睡眠が改善しない場合は、抗精神病薬の使用が効果的なことも
  • 就労している人や運転をする場合には、危険作業や運転を控えるアドバイスが必要。

フォローアップについて

  • 雇用されている方なら、健康保険組合や協会けんぽであれば、傷病手当金制度が使えることが多い。会社の休暇制度がある場合もある。
  • 慢性化や再発・再燃を繰り返し、社会適応が難しくなっていく場合は、障がい者手帳や障害年金などの申請について情報提供をする。
  • 元の業務への復職が難しい場合でも、障がい者手帳を取得することで、同じ会社の障がい者枠での雇用が可能になる場合もある。

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