Genpaku開発ストーリー:医療業界に思うこと、患者さんの体験について思うこと

まずはじめに、なぜGenpakuというサービスを開発しようと思ったんですか?

いくつかの病院を転々としながら医師として働くなかで、ずっと問題として感じていたことがあります。それは、医療の現場にいる人たちの間で、医学的な知識のアップデート状況にかなりのばらつきがあるということです。医師によっても最新の状況へのキャッチアップがどれだけできているかには差がありましたし、ましてや医師ではないスタッフには知識が全然行き渡っていない。そういう現実を肌で感じていました。

自分(注:白石先生)が携わってきた循環器内科という領域にも、それは当てはまります。たとえば、世代論的に聞こえてしまうかもしれませんが、20年前に最前線に立っていた世代の先生が、薬剤や治療のしかたに関してキャッチアップが全然できていない、といったケースはかなり見てきました。あるいは、今の基準であればとうてい手術適用になりえない患者さんを、20年前の感覚で手術の対象にしてしまったりといった事例も。もちろん、世代だけが問題というわけではないとは思いますが、病院内でも医師ごと・スタッフごとのばらつきがあったのは確かです。

院内にかぎらず、クリニックや病院間でもこうしたギャップはありました。たとえば、ある病院の患者さんが、適切な治療を施されて安定したあとで、紹介元のクリニックに返されたり、薬の処方を別のクリニックに委ねられたりしたとします。すると、せっかく効果の上がっていた薬をクリニックの判断で勝手にやめられてしまったり、薬を変えられてしまったりということがしばしば発生してくる。もちろん、その結果として再び症状が悪化してしまう患者さんも出てきます。

個別のケースを思い返すと、ただただ憤ろしく感じるところも正直あります。どうして今や間違いだと判明している知識にのっとって、誤った診断や治療が行われてしまうのだろうと。

ただ一方で、こうした状況には、ある意味致し方ないところもあります。というのも、ある一つの領域においてさえ、新たな知識の量や更新の速度が、人間にハンドリング可能な範囲を超えているところがあるからです。実務で忙しいなか、自分の専門領域だけでもきちんとキャッチアップしていければ御の字。ましてや専門以外の診療科も含めて完璧にしていこうと思ったら、よほどの人でないかぎり手が回りきりません。

とはいえ、それなら医師はすべからく自分の専門領域だけを固守すべきかといえば、そんなことはないわけです。腹痛を訴えている患者さんは問答無用で消化器内科に振るのが最適解、なんて極端な考え方をとる必要はない。腹痛を来たす疾患の中には、一般的な内科のお医者さんであれば手元でどうにかできるレベルのものもたくさんあります。それを「腹痛だったら消化器内科さんをご紹介しますので、そちらに行ってください!」といった機械的な対応に終始していたら、患者さんも医師も二度手間が常套化しますし、治療の質も当然下がります。

そういった問題ある状況を解決するものとして、気軽にアクセスできるライブラリみたいなものがあるといいのではないか。そう思ったのが、Genpakuを開発しようと考えた最初のきっかけです。最新の知見に基づいた情報がWebコンテンツとしてまとまっていれば、知識レベルのばらつきやそれによって現場で起こる問題の解消につながるだろうと考えました。Webサービスであれば、最新のガイドラインや知見をそのつど反映させやすいなど、一度作ってしまうとなかなか刷新がきかない紙媒体のデメリットも解決できます。デジタルだからこそ全般的にアップデートがかけやすく、つねにコンテンツをその時点で最高のものへと磨き込めるしくみになっているのは、Genpakuの強みだと考えています。

医療現場の事情として、近年のそのような状況があったわけですね。

開発の動機としては、それとは別に患者さん側の事情もあります。

疾患の中には、外来で短くやりとりしてお薬を出して、という対処だけでは良くなりきらないタイプのものがあります。わかりやすくかつ重要な例で言うと、高血圧などの生活習慣病がそれに当たります。循環器内科の範疇で言うと、心不全など代表的かつ知名度の高い疾患と言えるでしょう。

そういった疾患の治療には、患者さん自身の努力がどうしても欠かせません。QOLを高めるにはどうしたらいいか、健康的に生きていくには何をすべきかといったことに患者さん自身が思いを致して、自らアクションを起こす必要があります。心不全で言えば、適度な負荷の運動などを実践することで「心臓のリハビリ」を行うことが重要だと、医学的にも証明されています。そうした取り組みをどこまで自力で行なっていけるかが、病気が良くなるかどうかの分かれ目になってきます。

ただ、こうした治療のための自発的な取り組みも、実践にまで至らないケースがまだまだ多いのが現状です。外来診療での指導だけではその重要性を患者さんに伝えきれなかったり、それどころかお医者さん自身がその重要性をわかっていない場合さえあります。あるいは、指導に時間を割きたいのは山々だけれどリソースが足りない、というパターンもあるでしょう。いずれにせよ、患者さんに理解と納得を深めてもらうところまでやれている病院やクリニックはそう多くないというのが、私の率直な印象でした。

患者さんに十分理解・納得してもらえるだけの説明や指導を、もっとお医者さんが簡単に行なっていけるようにしたい。その手助けになるような何かを作りたい。その手段として、デジタルの力を頼る選択肢もあるんじゃないか。そんなふうに思ったことも、Genpakuの開発に乗り出した背景の一つです。

開発の道のり:プロトタイプから現状のスタイルへ

そんな白石先生の思いからスタートしたGenpakuの開発は、どのように進んでいったのでしょう?

とにかく念頭においていたのは、「最新の医学的な知識を、取り扱いやすい形にしていく」ということでした。既存のメディア、たとえば教科書や論文を当たれば、必要な知識を見つけること自体は不可能ではありません。ただ、それらはふつう現場で取り扱い可能な形にはなっていない場合がほとんどです。コンパクトでもなければ、検索性も十分とは言えない。そうした問題を解消し、利便性を高めたライブラリを作ることをめざして開発を行なっていきました。

それから、現場での実践のハードルを下げるコンテンツにしていきたいという思いから、各疾患のページに専門医の生の知見を当初から積極的に盛り込んでいました。たとえば教科書などは、どうしてもある程度決まったことしか書けないがゆえに、現場での実践に役立つ生の声といったものまではなかなか扱われていません。Genpakuでは「知識を現場で取り扱いやすい形に」という観点から、そうした生の情報、実際に現場で患者と向き合っている専門医の実践知を、コンテンツとして盛り込んでいます。

ただ、結局のところ最初の時点で完成したものは、まだまだ読みにくさや使いにくさの残る、「ハードルを下げる」というねらいとは少々かけ離れたものにとどまりました。

初期段階からさらにわかりやすく「ハードルの低い」ものをめざすことになったきっかけは何なのでしょうか?

Genpakuのプロトタイプがひとまず完成したタイミングで、実際に診療の現場で使えるのかを検証すべく数名の先生にユーザーになってもらったんですね。そのときに一番大きかった反応が「このサービス、診察時の患者さんへの説明にすごく役立つ!」というものだったんです。

詳しく聞いてみると、お医者さんたちが外来診療の中で抱いていた課題感として、説明や指導がいまいち患者さんに響いていないということがありました。「あなたは高血圧です、こういう治療が必要です」と患者さんに伝えても、なかなか納得してもらえている手応えが得られない、といったことですね。かと言って、疾患について一冊にまとめたパンフレットなどを「読んでおいてください」と言って渡しても、自ら完璧に読んで理解してくれる患者さんはごく少数です。つねに必要な情報を過不足ないかたちで伝えられればいいですが、既存の媒体ではなかなかそれが難しいのが現状です。

もちろん、既存の出版物や冊子にも、掲載されている情報の質が十分高いものはたくさんあります。実際、口頭での説明はそこそこにパンフレットをポンと渡してうまくいっているケースも、疾患によってはあるにはあると思います。ただ、必ずしも全部が全部使いやすいかたちに情報をまとめてくれているわけではありません。

それに、紙の印刷物だと、どうしても置き場の問題や探しやすさの問題が発生してきます。限られた院内に片っぱしから書籍やパンフレットを置いてしまうと、あっという間にスペースが逼迫します。必要なタイミングで必要なものをさっと取り出せる状態にしておくことも、そう簡単ではありません。

ちなみにパンフレットに関してもう少し詳しく言うと、パンフレットを持ってきてくれるMRさんがくまなくすべてのクリニックに回ってきてくれるわけでもなかったり、パンフレットを全部持ってきてくれるわけでもなかったりという事情もあります。人的リソースの問題なので如何ともしがたいところではありますが。それから単純に、内容がいまいち「わかってないなぁ……」と思ってしまうようなものもあります。情報が不足していたり、逆に過剰だったりと、網羅性とクオリティが担保されていないパンフレットも少なくありません。

知識が体系的にまとまったメディアは、たしかにすでにたくさん出回っている。ただ、情報がもう少しスムーズにデリバリーできるかたちになったほうが現場の視点からすると便利だし、テクノロジーがこれだけ進化している今の時代なら実現できるんじゃないかと。必要な情報をパッと取り出せる検索性を担保し、その情報を必要なぶんだけ、いわば「ちぎって渡す」使い方ができるメディアを作れるんじゃないかと思いました。その方向を見据えて、お医者さんが診察の中で抱いている「もっと患者さんに伝わる指導をしたい」「もっと患者さんに医学的な知識をインストールしたい」といった課題感に、解決の糸口を与えられるサービスにしていこうと。そのようにして、とにかく知識をわかりやすく使いやすくまとめる方向に振り切る方針が定まりました。

それから、説明を行いやすくする工夫として、現行のバージョンでは一部の疾患のページに判定ツールのようなものを設置しています。たとえば高血圧などは、血圧の数値や複合している疾患によって、とるべき治療のスタイルが変わってきます。そこで、必要な項目について入力を行うだけで最適な診療方針がパッとわかる機能を搭載しました。「この人にはこういうリスクがあるから、こういう治療が向いている」といったことが、文献などを当たらなくてもその場ですぐわかるので、現場では役立つ機能になっていると思います。

実際のところ、現在Genpakuを使ってくださっているあるお医者さんに聞いた話、Genpakuを使う前と後とで、患者さんへの説明における手応えがだいぶ変わったそうです。その場で計算ツールを使ってリスクの算出などを行なってみせると、患者さんもかなり納得してくれるんだとか。診察室において最も大事なことは、治療行動に移る手前でいかに「やらなきゃ!」と患者さんに思ってもらうかなので、そこをますます助けるサービスになっていくといいのかなと考えています。

実際にGenpakuを使ってみて

そのようにして現在の形になったGenpakuを、白石先生ご自身もクリニックで利用されているとのことですが、実際のところ使ってみてどんな感想をお持ちですか?

手前味噌ですが、相当役立っているなとは感じています。患者さんへの説明し忘れなども相当防げますし、情報を持って帰ってもらいやすいのも大きな利点です。そしてなにより、説明や指導に割く労力が削減できているのが相当大きい。以前はいちいち紙に図や数字を書きながら説明していたところが、完全にGenpakuのコンテンツに置き替わっているので、慣れてしまった今となってはもうGenpaku以前に戻れないです(笑)

ただ、患者さんの立場からしても、この変化はかなり良いものであるはずです。アナログな説明の仕方だと、お医者さん間でも、あるいは同じお医者さんの中でも、リソースの問題などによって説明の質にばらつきが生じます。Genpakuはその点において一定の水準を担保するサービスになっているんですよね。どんな状況でも患者さんにある程度しっかり情報をお渡しできるというのは、やはり画期的なんじゃないかと思います。

それから、昨今のコロナウイルス感染拡大状況下において、Genpakuが絶大な力を発揮してくれているのが発熱外来です。対応の質を担保しつつ、院内スタッフの感染リスクを最小化する診療フローが、Genpakuによって可能になりました。当院の発熱外来フローはGenpakuによって完成されたと言っても過言ではないとさえ思っています。

とにかく医師が倒れたら、ましてやコロナ感染者になってしまったら、クリニックは一巻の終わりです。ですから本音としては、コロナ疑いのある患者さんと医師との同室は私たちとしては極力避けたい。ただ他方で、コロナ疑いとなればしかるべき説明は行わなくてはなりません。「何日間待機してください」「こういう症状が出たらこうしてください」「お家では感染者をこういうふうに隔離してください」「こういうふうに洗濯物を取り扱ってください」等々、省くわけにはいかない説明事項がたくさんあります。そうしたなかで、感染リスクを抑えつつ、限られた時間の中でどう必要な説明を行うか。そこを解決してくれたのがまさしくGenpakuでした。

具体的な発熱外来の診療フローについて教えてほしいです!

発熱外来の患者さんがクリニックにいらっしゃったら、感染リスクを抑えるためにまず別室に隔離するんですが、その別室に、新型コロナウイルス感染症についてまとめたGenpakuのページへのリンクを、QRコードの形で掲示しています。

検査のそもそもの説明、濃厚接触者だったときの過ごし方など、説明すべき情報は基本的にすべてGenpakuのページ上にまとまっています。QRコードを読み取れば疾患のページにダイレクトに飛べるので、それを読み取ってもらうことで患者さんへの情報共有を非接触で完了できます。軽い説明は口頭でも行ないますが、詳しい情報はGenpaku上で把握してもらうことで、感染リスクを極小化しています。口頭の説明と違って何度も読み返してもらえますし、Genpakuのコンテンツはわかりやすさに重きをおいて作り込まれているので、その意味で患者さん側のメリットも大きいだろうという手応えがあります。

また、GenpakuのページのリンクのQRコードとあわせて、当院では公式LINEアカウント登録用のQRコードも掲示しています。こちらのほうは検査結果を送ったり、お会計のやりとりを行なったりするのに利用しています。感染者かもしれない患者さんに待合室で待機してもらったり、お会計時に直接やりとりを行なったりすることもやはり感染リスクにつながります。そのため当院の発熱外来では、請求書をLINEで送って、後日銀行振込等で診察料を支払っていただく方法を採用しています。

発熱外来以外のところでは、どのようにGenpakuを活用されているんでしょうか?

診察時に説明の補助資料として活用する使い方と、患者さんへの情報共有ツールとしての使い方がメインになっていますね。

Genpaku以前は、たとえば口頭だけだったり、いちいち紙に図や数字を書きながらだったりと、どのみちなかなか患者さんに伝わりにくいやり方で説明を行なっていたと、今にしてみれば思います。そこを、現在はPCやタブレットの画面上にGenpakuのページを示しながら行なえるようになった。一つ一つの文章が患者さんにも理解可能な噛みくだいたものになっていますし、図表も豊富なので直感的にもわかりやすくなっています。現に患者さんからも「わかりやすくていいですね」といったお声がけを一定いただくことができています。

それから、患者さんにピンポイントで必要な情報を持ち帰ってもらってあとでそのつど読み返してもらう、という使い方もしています。発熱外来の話でも言及しましたが、QRコードを介したページの共有が簡単にできるので、診察室でパッとQRコードを読み取ってもらって「お家でまた読んでみてください」とお願いする、といったことができます。その場での説明だとどうしても覚えられないし理解しきれないところがあると思うんですが、その穴を埋めるのにGenpakuがある程度役立ってくれている手応えはありますね。

繰り返しになりますが、たとえば生活習慣病や心不全といった疾患では、患者さん自身の病気への理解や主体的な取り組みが不可欠です。ご自身が今どういう状態で、そしてこれから何をしていかなくてはいけないのかを、しっかり理解してもらうことが欠かせません。そこを後押しするツールとして、Genpakuは役立っているし、これからますます役立つものになっていくだろうとも思っています。

ちなみに、Genpakuのページの共有方法ですが、QRコード以外にも、紙のプリントアウトで行なうことも可能です。GenpakuのコンテンツはA5用紙での印刷を想定して整形されているので、紙での共有もストレスなく行なえるようにはなっています。ただ当院の場合、東日本橋という場所柄かデジタルに強い患者さんが多いので、紙よりQRコードのほうがもっぱらありがたがられます。とはいえ、状況に応じた使い分けができるので、たとえば電子デバイスの扱いに不慣れな患者さんが多い医院では紙のプリントアウト主体で活用する、といったことも考えられるかと思います。

他に想定している使い方や、ユーザーの声として実際に聞こえてきている使い方はありますか?

噂によると、待ち時間のあいだに患者さんにGenpakuのコンテンツを読んでおいてもらう、といった使い方をしている先生もいるようです。どういう疾患の患者さんにどういう読まれ方をしているのかといった具体的なところまでは把握できていないんですが、患者さんの待ち時間を活用する使い方も考案されているみたいです。

それから、患者さんがあまりに多すぎて一人一人に丁寧に対応している余裕がないようなケースでは、Genpakuのページを丸投げして「読んでおいてください、以上!」としてしまうパターンも、お医者さんによってはあるかもしれません。もちろんそういう使い方が推奨されるわけではないですし、それではGenpakuの価値も十分には発揮されないだろうとは思います。しかしとはいえ、患者さんへの説明や指導の質の最低ラインがGenpakuによって高まるのは確かだと思います。医師のコミュニケーションの仕方や能力、リソースの多寡などに左右されず、患者さんに対する一定水準以上の説明や指導を可能にしてくれるのがGenpakuの強みですし、そういうサービスをめざして開発を進めているというところもあります。

あと、余裕のあるなしの話で言うと、緊急事態下などでもGenpakuは活躍しそうかなと予想しています。たとえば急性疾患などのケースでは、最優先されるのは当然患者さんへの対応であるわけですが、他方でご家族など周りの方々へのケアや説明が十分なされることが本来は望ましいです。ただ、現実問題そこまで手が回るほうがまれなのが現場の実情です。お医者さんがものすごい早口で説明を行なうか、医師以外のスタッフがそこをできる限りでサポートするか、そもそも説明が放棄されるかといった具合に、なかなか十分な対応ができていない場合がほとんどです。そういった事態をカバーするツールとして、Genpakuが役立つことはあるかと思っています。目の前でいま何が起きているのかを把握して不安な気持ちを落ち着ける、そういう手がかりとして使ってもらえるポテンシャルもあるだろうとは感じています。

あともう一つ、現場の視点と違った観点で言うと、クリニックのホームページにGenpakuのコンテンツを掲載する使い方も今後広げていけるんじゃないかと考えています。たとえば予防接種や、最近で言えば発熱外来など、多くの患者さんの関心になる事柄について、必要十分な情報をGenpakuから引用するかたちで掲載する使い方が浸透していけばいいなと。現状、一つの事柄やテーマについて、いろんな病院のホームページがそれぞれにいろんな記事を出していたりするわけですが、そこにもどうしてもクオリティのばらつきはあります。そういったところで、誰もが使える共通のソースとしてGenpakuが浸透してくれたら、という思いはありますね。

ちなみにそれに近い話でいうと、Ubieでリリースしているサービスである「AI受診相談ユビー」に、Genpakuのコンテンツが今後紐づいていく可能性はあるかもしれません。入力した症状に対して疾患がサジェストされるところで、その疾患の詳細な説明としてGenpakuのページが引用されたり、といったかたちもありえなくはないのかなと。

Genpakuの今後の展望

今のところ、どんなお医者さんにどんな場面でGenpakuを使ってほしいですか?

まず第一には、治療にあたって患者さんとのコミュニケーションが大事になる疾患で役立ててほしいと思っています。

今のところGenpakuのコンテンツの開発は、患者さんへの説明や指導の重要性がより高い疾患を中心に進められています。繰り返しになってしまいますが、具体的には生活習慣病や心不全などですね。こうした疾患では、治療・改善にあたって患者さん自身の理解や自覚が不可欠です。Genpakuはそうした理解や納得の促進に有効なので、患者さんとのコミュニケーションを補完するツールとして大いに活用してもらえたらなと思っています。

逆に言えば、指導があまり得意じゃなかったり、忙しくてそこになかなか時間がかけられなかったりといった先生にも、どんどん使ってみてほしいです。Genpakuのページを患者さんに渡すだけでも、一言二言だけの説明に比べれば情報共有の最低ラインはぐっと上がりますし、伝え忘れなども防いでいけます。アプリケーションのダウンロードなどが必要ないシンプルなWebサービスなので、面倒はイヤだけど少しでも業務効率化したい!といった方でも気軽に使っていただけます。

それから、お医者さん以外のスタッフが説明や指導に当たる場面でGenpakuが活用されているケースもあるみたいです。たとえば、食事に関するページを部分的に印刷したものを管理栄養士さんにパスして、食事指導の際に栄養士さんづてで患者さんにGenpakuを介した情報共有を行なう、といったオペレーションを組んでいるお医者さんもいるそうです。伝言ゲームになると情報の齟齬や欠落が一定程度出てきてしまうところで、Genpakuを使って確実性や正確性を担保している事例だと思います。まだそこまで具体的にイメージできているわけではありませんが、そういう応用的な使い方もどんどん広がっていったらいいとは思いますね。

現時点で感じている課題や、今後の機能改善について考えておられることはありますか?

Genpakuの開発において大切にしているのは「いかに患者さんの理解と納得を促進し、その先のアクションを後押ししていくか」です。その点で、今よりもさらにわかりやすさや使いやすさを高める余地はあると感じています。文字をより読みやすく、図表をよりわかりやすくといったデザイン的な部分もそうですし、中身についてもそうです。

たとえば、ユーザーの声から感じることとしても、情報の整理は今後重要になってくるように思っています。診察室で一人の患者さんと直接向き合える時間は限られている以上、疾患にまつわる情報を片っぱしからすべて患者さんに共有するのは現実的ではありませんし、非効率的です。病気への認識と「治療しなきゃ!」という自覚を持ってもらったうえで、個々の患者さんの状況に応じたアクションをいくつか提示するのが限度ですし、そこがきちんとやれればいいとも言えます。そういう現場の事情に鑑みても、情報を重要度や頻出度に応じて序列化するなど、現場での情報の取捨選択を行ないやすくするためのいっそうの工夫は必要かなと思っています。

あとは、コンテンツの量の問題もありますね。よく見る症状や疾患に関して、使いやすいコンテンツをもっともっと増やしていきたいです。先にもお話ししたとおり、現状Genpakuのコンテンツは、生活習慣病はじめ医師と患者さんとのコミュニケーションの重要性がより高い疾患に偏っているので、カバーできる範囲をもっと広げていきたいなとは強く思っています。

それから、患者さん自身の体験がGenpakuによってどれだけ向上しているかだったり、病気の治療にどれだけ貢献できているのかといった、効果の度合いを定量的に追えるようにしていきたいとは考えています。たしかに患者さんからの「わかりやすい、読みやすい」といった好意的な評価はいただけていますし、継続治療にきちんと来てくださっている患者さんも当院にはたくさんいらっしゃいます。以前にも説明したことをもう一度説明しなきゃいけない、といった二度手間もおかげさまでかなり少ないです。ただ、そこにどれくらいGenpakuが効いているのか、理解や実践、そして最終的なゴールである病気の改善にどれくらい寄与しているのかは気になりどころではあります。説明の二度手間が少ないのも、そもそも患者さんの理解力が高いからかもしれない。あるいは、手前味噌ですが、私自身が患者さんへの説明や指導にかなり力を入れているからということもあるかもしれません。医療者の立場としてGenpakuに助けられている部分は相当大きいとは感じていますが、ひるがえって患者さんへの影響はどの程度のものか、そこはゆくゆくきちんと追いかけていきたいなと思っています。

ところで、Genpakuを診察室以外のシーンで患者さんに用いてもらう方向性は、現状開発側として想定しているんでしょうか?

今のところあまり考えていないですね。患者さんが自分で検索してGenpakuにたどり着くパターンというのは、あまり想定していないです。そういう使い方をしてもらうことは全然かまわないですし、リテラシーの高い人が情報収拾の過程でおのずとたどり着いてしまうようなケースも実際あるとは思うんですが、サービスとしてプッシュしようとは考えていないです。

患者の体験価値向上に向けて

クリニック独自の取り組み

  • 公式LINEを使った連絡

    主に発熱患者さんになりますが、PCRの結果連絡や、お会計についてやりやすいように、公式のLINEを登録してもらっています。
    電話だと、番号の間違いがあったり、そもそも電話かけても出られない・よく知らない番号だと出づらいとかあったりしますからね。
    また、お会計なども、診療後にLINEで詳細を送ることができますので、お互いにリスクなくやり取りできます。

  • Webで予約がしやすい

    EPARKなど使ってWeb予約などできるようにしています。

  • Web事前問診

    うちはユビーを導入しています。来院の前に問診をして、保険証などの情報を送ることができるので、来院後のカルテの作成などの待ち時間を大幅に短縮することができます。