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肝胆道系酵素の健診異常の診療について

最終更新日時
参考ガイドライン
・文献等

概要

慢性肝疾患は自覚症状がないことが多く、健康診断で肝機能異常を指摘され受診することが多い。肝障害は大きく肝炎型(肝細胞障害型)と胆汁うっ滞型に分けて考える。

慢性肝疾患のほとんどは無症状であるが、急性肝炎や慢性肝炎の急性増悪時には倦怠感、食欲低下などの症状が出現する。
肝障害度が強いと黄疸が出現する。皮膚の黄染だけでなく、褐色尿で気づくことも多い。
右季肋部痛は、胆石症だけでなく、肝胆道系の感染症や悪性腫瘍の契機となる。

念頭におく鑑別

など

問診

急性の肝障害が疑われるとき

発症前6ヶ月間の生活歴(観血的医療行為、海外渡航、性的接触、生の魚介類やブタ・イノシシ・シカの生肉摂取、大量飲酒、薬物乱用の有無)や薬物歴(処方薬、漢方薬、健康食品など)を聴取する。

慢性の肝障害が疑われるとき

飲酒、肥満の有無及び肝性脳症などの肝不全症状の有無を確認する。

他に確認する生活歴

既往歴:手術歴、輸血歴、薬物乱用歴、刺青歴など
家族歴:家族の肝疾患の有無

身体所見

  • 意識状態:肝性脳症による意識障害の有無
  • 黄疸と皮膚症状:血中総ビリルビンが2.0~3.0mg/dLになると黄疸を肉眼的に認めるようになる(顕性黄疸)
  • 手掌紅斑、くも状血管腫、女性化乳房など(慢性肝疾患、肝硬変)
  • 掻痒感による掻き傷(慢性の胆汁うっ滞)
  • 腹部所見
    • 肝脾腫および腹水貯留の有無
    • 腹壁静脈怒張の有無
  • その他
    • 下腿浮腫、肥満の有無

検査

血液検査

肝逸脱酵素であるAST・ALTと、胆道系酵素であるALP・γ-GTPの上昇の程度を比較し、肝炎型か胆汁うっ滞型かを鑑別する。
※肝逸脱酵素は基準値の10倍以上に上昇することもあるが、胆道系酵素は酵素誘導により上昇するため基準値上限の3倍以上は明らかな上昇、5倍以上は高度上昇と判断する。

肝逸脱酵素(AST・ALT)

  • AST<ALT
    • 慢性肝炎、肥満による脂肪肝
  • AST>ALT
    • 肝硬変、肝癌、アルコール性肝障害

※急性肝炎の発症早期はASTが優位になるが、ピーク近傍になるとALT優位に逆転する。

胆道系酵素(ALP・γ-GTP)

  • ALP
    • 薬剤性肝障害、原発性胆汁性胆管炎(旧称:原発性胆汁性肝硬変)、閉塞性黄疸などで上昇。

※ALPにはアイソザイムが存在する(肝、骨、小腸、胎盤など)ため、胆道系以外の疾患を鑑別するのに役立つ。

  • γ-GTP
    • ALPに比べて肝胆道系特異性が高い。飲酒で上昇しやすい。
  • 合成・代謝機能障害の評価(Alb・ChE・PT・T.chol)

 Albは半減期が14~20日と長いため、リアルタイムで肝の蛋白合成能を評価することはできない。これに対しPTは半減期の短い第Ⅶ因子(4~6時間)を含むため、リアルタイムに蛋白合成能を評価できる。 

  • 解毒・排泄機能の評価(Bil、アンモニア)

 肝胆道系疾患では直接ビリルビンが優位になる。
※AST、ALT、ALP、γ-GTPが基準値内で総ビリルビンのみ上昇する場合は溶血か体質性黄疸を疑う。

  • 肝線維化マーカー(血小板、ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン、PⅢP、M2BPGi)
    • 肝線維化が進むと脾機能亢進に伴い血小板数が低下する。血小板数10万μL以下になると肝硬変の合併が示唆される。
  • 腫瘍マーカー
    • 肝細胞癌(AFP、AFP-L3分画、PIVKA-Ⅱ)、胆管細胞癌、膵癌(CEA、CA19-9)

肝障害の原因検索

血液検査

慢性肝炎と関連のある採血項目

  • HBs抗原、HCV抗体
  • 抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体、抗平滑筋抗体(自己免疫性肝疾患)
  • HbA1c、血糖値(肝性糖尿病)
  • TSH、FT3、FT4(甲状腺疾患)
  • 銅、セルロプラスミン(Wilson病)
  • 鉄、フェリチン(ヘモクロマトーシス)

急性肝炎と関連のある採血項目

  • IgM-HA抗体、HBs抗原、HCV抗体、HCV RNA、IgA-HE抗体、HEV RNA
  • EBウイルス(VCA IgG、VCA IgM、EBNA、EA IgG)、サイトメガロウイルス抗体

腹部超音波検査・CT検査

肝腫大や萎縮、肝辺縁鈍化、肝表面不整、脂肪肝、脾腫大、胆道閉塞、腹水貯留、腫瘍性病変の有無を評価。

専門医紹介のタイミング

倦怠感や腹痛、黄疸などの症状を伴う場合は、急性肝炎や閉塞性黄疸の可能性があるためすぐに紹介。
特に自覚症状がない場合は上記の「肝障害の原因検索」の項目の結果が出てから紹介でもOK。

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F T消化器内科
Verified
2021/8/13

健診で肝障害を指摘されて受診される方の原因疾患は、NAFLDアルコール性肝障害の頻度が多いです。

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